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創作⑧ 「Wとその恋」

友人Wから連絡が来なくなって、かなり久しい。

今までいろいろ奇異な行動をしてきたWだが、三十二回連続ドタキャン事件の後は、さすがに怒っている俺に会わす顔がなくなったのだろう。

俺の方はといえば、急にWが来なくなって少し拍子抜けしたところもあるが、正直ホッとしている部分が大きかった。


そんなある日、また突然Wが家にやって来た。

しばらくの間来なかったのがまるでなかった事のように、当然のように勝手に家に入り、当然のように人の家の冷蔵庫を荒らしている。

「おい親友、牛乳切らしてるぞ。ちゃんと買っとけよ。」

俺のことを親友と呼ぶのも以前のままだ。

「人の家の冷蔵庫の中身なんか、いちいちチェックするなよ。それよりお前、だいぶ長い間来なかったじゃないか。・・・いや、来て欲しかった訳じゃないんだけどな。」

という俺の言葉を聞くと、Wは頷きながらこう言った。

「お前に淋しい思いをさせて悪かったな。だけどオレ、恋愛中だったんだ。」

「・・・レンアイ?まさかあの恋に愛という字をつなげる恋愛じゃないよな?!」

俺は驚いて聞いた。

「まさにその恋愛だよ。オレだって人間なんだ、恋愛ぐらいする。」

・・・そういえばWも人間だったな。

「で、その相手は誰なんだ?」

「お前の知らない子だよ。リカという子さ。」

リカちゃん・・・まるで人形のような名前だ。

「ふうん。それでそのリカっていう子は、お前の事好きだって言ってくれてるのか?」

俺の問いに、ふふんと鼻を鳴らしてWは笑った。

「当たり前だろ。そうでなきゃ恋愛じゃなくて片思いっていうんだ。」

たまにWは真っ当な事を言う。そして続けた。

「だけど最近、リカが怒ってるんだよな。」

そうか、その理由は何となく分かる気がする。

俺が納得して頷いていると、Wは不満そうに言葉を荒げた。

「おいお前、親友のくせにリカが何を怒っているのか聞かないのか?!」

・・・しょうがない、聞いてやるか。

「それでそのリカちゃんていう子は、何を怒っているのさ。」

Wは満足気に話し出した。

「それがさ、オレって仲がいい奴ができると、そいつに甘え放題甘えちゃうんだよな。」

うんうん、確かに。

「で、リカにも甘えられるだけ甘えて、こいつってどれだけ甘えれば怒るかどうか試そうと思ってやってみたんだ。」

「・・・成るほど。で、リカちゃん怒っちゃったという訳なんだな。」

「まあな。でもそれで限度が分かったから、これからはその限度ギリギリのところで止めるつもりだってリカに言ったら、それでまた怒っちゃってさ。」

そりゃあ当然だろうと俺は内心思ったが、これは口に出しておくのは止めておいた。

「おかしいよなー。ちゃんと怒りだす直前で止めるって言ってるのに。」

おかしいのはWの方だと俺は思ったが、これも言わないでおく。

「もうさ、リカの奴、オレのこと変わり者だとか変人だとか言ってきて、ケンカし出したら全然しゃべるのが止まらなくなって、この前なんか朝の九時から午後の三時まで、メシも食わずにずっと怒ってしゃべっていたよ。」

六時間か、そりゃすごい。

「ふうん。それで別れちゃったのか?」

「いや別れてなんかないさ。一週間に四、五回は会ってるよ。」

「へえ、それはある意味すごいな。ケンカは終わったのか?」

「いや、会って夕食食ってるだけなら普通なんだ。だけど、食い終わるとケンカになる。」

「ほう。」

「会計し終わると、とたんに機嫌が悪くなるんだよな。」

「ふーん・・・夕食代はお前が出してるのか?」

「いや、割り勘だけど?」

成るほど、それがケンカのきっかけになる訳だな、と俺は思った。

「で、どうするんだ?お前、自分の態度を改めて、リカちゃんに優しくするのか。それとも別れちゃうのか?」

「オレは改めるところなんて全然ないし、リカと別れる気もない。」

きっぱりと言い切るWに、俺はこいつに付ける薬はないと思った。

「でもケンカばっかしてると疲れるし、またお前の所にも行ってやらなくちゃいけないと思ってな、来てやったんだ。」

「いや、俺のことは考えなくていいから。」

そういう俺の言葉は、Wには届かなかったようで、

「また、ちょくちょく来てやるからな。とりあえず今日はこれ食ったら帰る。」

そう言って、俺の夕食用の食材を全部食べ尽くした後、Wは帰って行った。

またWの来襲に怯える日々が始まるのかと俺は思ったが、その日以来、Wはまたパッタリと来なくなった。


Wがリカちゃんと上手くやってるであろうことを俺は願っている。

本気で、切に切にそう願っている。
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プロフィール

月野

Author:月野
現在、病気療養中の四十代の女性。
最近少し忙しいので、あまり記事も書けないし、コメントの返事も遅くなるかもしれません。
ですが、過去の記事にコメントいただけるのは嬉しいので、歓迎しています。

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