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創作⑦ 「Wと高級外食」

「よお親友、明日の昼メシ、一緒に食べに行こうぜ。オレが奢ってやるよ。」

友人Wから三十二回目の昼メシの誘いの電話がきた。

「ああ分かった。じゃ、いつものコンビニ前で十二時に待ち合わせな。」

俺は明日起きるであろうことを確信しながら、心にもない約束をした。

「オッケー。じゃあ明日な。」

Wは軽く返事をすると、電話を切った。

Wは絶対明日は来ない。

俺にはもう分かってる。

何故なら、これがもう三十二回目だからだ。

誘いの電話がきて承知すると、その約束の日に電話が掛かってきてドタキャンされる。

いくら馬鹿でも三十一回もやられれば、予想がつくというものだ。

その日の夜、俺は友人たちに電話をしまくって、Wの行動パターンを吹聴しまくった。

三十一回もドタキャンされれば、いくら温厚な俺でも恨みが積もるというものだ。

そして友人たちに、

「明日Wは絶対にドタキャンしてくる。もしキャンセルの電話がなかったとしても、絶対に奴は来ない。」

と、強く強く言いまくった。


翌日の午前中、Wからキャンセルの電話はこなかった。

まあ電話がこなかったとしても、当人が現れるはずはないからなという確信を持って、俺は待ち合わせ場所に向かった。

奴が来ないのを確かめるためだけに。

果たしてWは、待ち合わせ場所にはいなかった。

しばらくコンビニ前で待った俺は、勝利の笑みを浮かべ、帰ろうとコンビニに背を向けた。

その途端、

「ごめん、ごめん、遅れちゃったぁ。」

というWの声が。

俺はギョッとして振り返った。

確かに奴はそこにいた。

「いやさー、昨日ある奴から電話があってさ、お前がオレのドタキャンで怒りまくってるっていう話を聞いたから、今日は絶対来ようと思ってさ。」

・・・なんだ、そういう事か。

余計な事をする奴がいたもんだ。

俺はまだ腹を立てていた。

三十一回のドタキャンの罪は軽くないんだぞ。

そんな俺の気持ちを察したのかWは、

「でも今回は俺が飯代おごるから、機嫌直してくれよな。何でも好きな物食っていいんだぜ。」

と、妙に媚を売ってくる。

そーか、そーか、何でも好きな物食っていいんだな。

俺は頭の中で一番高い外食は何か考え出した。

焼き肉か、高級寿司か、それとも・・・。

その時、Wが大きな声を出した。

「おっ可愛い!おい、これ見てみろよ。」

見ればペットショップの入口につながれている子犬が、短い尾をちぎりそうになる程振りながら、こちらを見てる。

「可愛いなぁ。抱っこしたいなぁ。」

Wは俺をチラチラ見ながら、そう言ってきた。

「抱っこすればいいじゃん。」

俺がそう言うと、Wは待ってましたと言わんばかりに、

「じゃあ、これ持ってて。」

と言って、自分の馬鹿でかいカバンを俺に差し出してきた。

持ってみると、何が入っているのかやけに重い。

十数キロはありそうだ。

「おいW、このカバンやけに重いぞ。」

俺が不平を言うと、Wは、

「大事な物が入っているからな、下に置くなよ。」

と言い返してくる。

大事な物ってなんだよ、子供でも入っているのか。

だけど高価な昼メシのためだ、ここはもう少しの我慢だと俺は自分に言い聞かせて、Wが子犬と遊び終わるのを辛抱強く待っていた。

「いやー可愛かったなぁ。カバンありがとう。」

たっぷり十五分は子犬と遊んだWが、そう言って俺からカバンを受け取った。

やっとクソ重いカバンから解放されたと安心した俺に、Wは突然こう言い放った。

「あっ急用があるのを忘れてた!悪いけど、オレこれで帰るわ。昼メシはまた今度な。」

何だって!という言葉が俺の口から出るより早く、Wはスタスタとかなたに歩き去っていた。

普段の歩き方はノロノロのくせに、その時だけはまるで風のように速い歩き方だった。

後にはただ、呆然と立ち尽くしている俺が取り残されているだけだった。
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プロフィール

月野

Author:月野
現在、病気療養中の四十代の女性。
最近少し忙しいので、あまり記事も書けないし、コメントの返事も遅くなるかもしれません。
ですが、過去の記事にコメントいただけるのは嬉しいので、歓迎しています。

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