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創作⑥ 「Wと巨大生物」

友人Wが、いつものことだが突然やって来た。

「よお親友、海に行こうぜ。」

今日のWは、自分の車で来ている。

家に上がられても冷蔵庫の中身が空っぽになるだけので、俺は喜んで出掛けることにした。

「それにしても海はまだ寒くないか。」

俺がそう言うと、

「じゃあ川だ。川に行こうぜ。でっかい川。」

はいはい、今日のWはどうやら水のある所に行きたいようだ。

俺は川に同意することにした。


三十分ぐらいのご機嫌のWの運転で、河原に着いた。

川の名前をWに聞くと、

「この川はなー、中国と北朝鮮の境にある川と同じくらいの幅なんだ。脱北する人ってのは、この位の川を泳いで渡るんだ。」

という知識を披露してくれた。

はいはい、つまり川の名前は知らないってことなんだね。

まだなんだかんだ言ってるWに構わず、俺は水切りを始めた。

こう見えてもなかなかの腕前なんだ。

Wもそれを見て水切りをやろうとしたが、全くうまくいかない。

選ぶ石も適した物ではないし、投げ入れる角度もよくない。

うまくできないとやはりつまらないのか、Wはそのうち一人で川の中に飛び出ている石を渡って遊び始めた。

と、その時、ドッボーンという派手な音と水しぶきが上がった。

俺が驚いて見ると、Wが頭の先からつま先までぐっしょりになって岸に上がっているところだった。

「何やってんだ?」

普段が普段なので、こんな場合でも「大丈夫か。」なんて優しい言葉をかけてやる気になれない。

Wは、

「あの石を渡っていこうとしたら、水に落ちちゃってさー。」

と、川から頭を出している白い石を指さした。

多少小さめの石だが、上が平らでガタついてもいない。

岸から離れ過ぎてもいない。

その石を調べながら、ここからどうやって落ちるのか俺は疑問に思った。

そんな疑問をよそに、Wは帰り支度をさっさっと始めた。

まあ着替えもないから、帰るしかないだろう。

俺だって鬼ではない。

Wは車のトランクから毛布を出してくると、それを助手席に敷いた。

そして、その上に座って言った。

「さっ、帰ろうぜ。」

えっ、てことは俺が運転かよ。

自分の車を俺が運転して帰ることに一粒の疑問も抱いていないWにかける言葉も見つからなくて、俺は黙って運転席に座った。

やれやれ、免許証を持ってきて本当に良かったよ。

帰る道すがら、Wは来た時と打って変ってずっと文句を言いっぱなしだった。

「大体さー、あの石がいけないんだぜ、傾いてるから。」

傾いてなんかいなかったけど・・・と言っても無駄な事は分かっているので俺は黙って聞いていた。

「しかも水没してて、上に苔が生えてたから、ヌルヌルだったんだよな。」

いや、あの石は水から頭が出ていて乾いていたし、苔も生えていなかった。

俺は実際見たんだから知ってる・・・と言っても無駄な事は分かっているので俺は黙って聞いていた。

「おまけにさ、川の中にカミツキガメがいたんだぜ。あれに驚いて転んじゃったんだ。」

いや、川には生き物の姿は見えなかった。

ましてやカミツキガメなんて大きな生き物は全く見えなかった・・・と言っても無駄な事は分かっているので俺は黙って聞いていた。


そんな調子で家に着く頃には、Wは川で巨大な生物に食べられそうになり、命からがら川の中を泳いで逃げたので濡れネズミになったことになっていた。

そしてWの泳ぎが一流の水泳選手のように速くなかったら、今頃彼は得体のしれない生物の胃の中にいただろうという冒険談にまで発展していた。


W、お前って幸せな奴だな。
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プロフィール

月野

Author:月野
現在、病気療養中の四十代の女性。
最近少し忙しいので、あまり記事も書けないし、コメントの返事も遅くなるかもしれません。
ですが、過去の記事にコメントいただけるのは嬉しいので、歓迎しています。

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