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創作④ 「Wと財布」

友人Wは、吝嗇家でもあった。

彼の買い物姿を見ていると、ある物を買う場合、同じ種類のものを全て比較し、一番安い物をいつも買っていた。

服でも、機械でも、食べ物でも。

安さだけが彼の中の基準であり、似合うか、役に立つか、美味しいかどうか等には全くの無頓着だった。

そのためとんでもないセンスの服を着ていたり、買ったはいいもののすぐに調子が悪くなった機器を使っていたり、食材を腐らせてしまったり等していた。

「安物買いの銭失い」とは、まさに彼のためにある言葉だと俺は常々思っていた。


また吝嗇家のため、物を捨てるという事もなかなかやろうとしなかった。

彼の家へ行くと、壊れた自転車に始まり、ありとあらゆる壊れた物が家の中を陣取っていた。

壊れた物の部品を取って、また再利用するのだと彼は言っていたが、部品が外された試しはなかった。

仮にも家賃を払っているのだから、不用品が部屋をふさいでいる面積分を考慮に入れれば、要らないものを捨てて広くなった部屋に住んだ方がよっぽど経済的だと俺は言ったが、その理屈は彼には全く理解できなかったようだ。


そのWが、ある日とんでもなく高い財布を買ってきた。

ブランド物で、なんと二十二万もするという代物だ。

俺は仰天してWに聞いた。

「お前、どういう風の吹きまわしでこんな高い財布を買ってきたんだ?」

「おいおい、いい物持たなきゃ、いい人生は送れないぜ。」

普段のWの口からは絶対出てこないセリフを聞いて、俺は一瞬彼の事が心配になった。

しかし財布の中には四百二十三円しか入ってないという事実を発見し、また普段どおり俺の家の冷蔵庫を物色しているWの姿を見て、よかったいつものWだと安堵した。

その時、俺の家のテレビから大家族スペシャルの番組が流れてきた。

子供がたくさんで、下の方の子供にはランドセルも買ってやれない家族が映っていて、母親は一生懸命上の子の要らなくなったランドセルをきれいに拭きあげ、下の子に渡していた。

その母子に入学式が近付いたある日、母親が街へ出掛けて行った。

何をするのかと見ていると、母親は入学式のスーツに付けるための高いコサージュを買った。

俺は目を疑った。

毎日使う子供のランドセルには金を使わずに、一年に一回ぐらいしか使わないコサージュに金を使うのか?

「この母親、ちょっとおかしいんじゃないか?」

俺は思わずそう呟いていた。

するとその言葉を聞きとめたWが、冷蔵庫の中に入れてあった総菜パンをほおばりながら口を挟んできた。

「別におかしくないぜ。」

「なんで?だってコサージュなんて普段使いもしないものなんだぜ。それに金をかけて、子供にランドセルを買ってやらないなんて、どう考えてもおかしくないか?」

「あのなー、お前は貧乏ってものを分かってないよ。」

Wは威張り腐って言葉を続けた。

「いいか、毎日毎日貧乏してるとな、ある時ふとパーって金を使いたくなるもんなんだ。人間てのはな、あんまり我慢し過ぎるとバランス感覚が狂うんだよ。」

「・・・へえ、そうなのか。」

意外にもまともなWの意見に俺は虚をつかれた。

「おいW、お前の家も貧乏だったのか?」

「いーや、オレは裕福な家庭に育ったけど?」

それらなんで貧乏人の気持ちが分かるんだ?

それに何でいつもあんなに吝嗇家なんだ?

俺の頭の中は疑問符でいっぱいになった。

その時、ふとWの二十二万の財布が目に付いた。

「・・・W、もしかしてお前もパーっと金が使いたくなったのか?」

「オレ?いーや、オレはそんな事しないよ。大体オレは貧乏じゃないしな。」

そう言ってるWを見ながら、俺は確信した。

Wがあの母親の気持ちが分かったのは、彼があまりにも吝嗇家すぎるからだ。

我慢に我慢を重ねすぎたせいで、彼の金銭感覚が狂ってしまったんだ。

彼がいくら否定しようと、その証拠がここにある。

二十二万の財布という形をとって。

可哀そうなW、お前は人の事なら気付けるのに、自分の事は気付けないんだな・・・。
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プロフィール

月野

Author:月野
現在、病気療養中の四十代の女性。
最近少し忙しいので、あまり記事も書けないし、コメントの返事も遅くなるかもしれません。
ですが、過去の記事にコメントいただけるのは嬉しいので、歓迎しています。

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