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創作① 「Wとニューヨーク」

Wという男がいる。

友人である・・・一応。

なぜ「一応」なのかといえば、それは彼が勝手に人の家にズケズケ上がり込んで、勝手に人の家の冷蔵庫の中身を食い漁り、勝手に俺の親友を名乗っているからである。

俺は「親友」とは認めないが、寛大だから「友人」ぐらいは認めてやっているのである。

「一応」つきだけど。


そのWが、今日もズケズケと家にやってきた。

「おい親友、いいニュースだぞ。」

Wは俺のことを親友と呼ぶ。

「何さ。」

「オレ、明日からニューヨークへ行くぞ。お前も来るだろ。」

「は?」

「ニューヨークへオレとお前と、それからアケミとタクローも連れてくんだ。」

「・・・アケミはお前んちの猫だろ。だけどタクローって誰だよ。」

「えっお前、自分で飼ってる犬の名前も知らないの?」

「俺んちの犬はポチだよ。」

するとWは大仰にため息をついて、

「お前さ、犬がポチだなんて、あまりにもありきたりでつまらなくないのか。 オレ、あんまりお前んちの犬が可哀そうだから、タクローっていう名前を付けてやったんだよ。感謝してよく覚えとけよ。」

人の家の犬に勝手に名前をつけるな、なんて勝手なWに言っても無駄な事は分かっているので、俺は諦めて犬の名前をタクローに改める事にした。

「だけどなんでニューヨークなんだよ。ニューヨークに何かあるのか。」

「ニューヨークっていったら世界最大の都市。何でもあるに決まってるじゃないか。」

さすがW、話が全く見えてこない。

「いや、そういう事じゃないんだけど・・・。俺はニューヨークへなんか行かないよ。仕事だってあるし、暇人じゃないんだ。」

するとWは、断られてもへっちゃらな顔で、

「あっそう、行かないの。お前が行かないなら、オレとアケミとタクローの三人で行ってくるわ。」

は? なんで人の家の犬まで?

「なんでポチ・・・じゃなくてタクローを連れてくんだよ。」

「だってアケミが一人じゃ可哀そうだろ。ケージの中に一緒にいてくれる奴がいないとな。」

Wは全くトンチンカンな答えを返してくる。

だけどアケミという猫と俺の家の犬は全く面識がないし、だいたい家のタクローは猫が大嫌いなのだ。

一緒になんて連れて行ったら、ケージの中が血の海になるぜ、冗談じゃなく。

その時、俺はある事を思い出した。

「あ、そういえばお前んちの猫、この前子供を産んだばかりじゃなかったっけ?ほら六匹も生まれて大変だって言ってたじゃないか。」

「ああ、そうだよ。」

「ああ、そうだよって、だったら子猫はどうするんだ?」

「あーそうだったな。子猫がもう少し大きくなって、もらい手がついてからにするか。」

「・・・ああ、そう。で、それはどれぐらい先なんだ?」

一応、俺は聞いてやった、一応。

「そうだなー、三ヶ月・・・いや半年ぐらい先かな。それとも一年後ぐらいかな。」

いや、もうここまで聞けば十分だ。

Wは、ニューヨークへなんか全く行く気なかったんだ。

たまたま俺の家に入る直前、または俺の顔を見た瞬間、ニューヨークへ犬猫連れて行く気になっただけの話だ。

俺はあきれ果てて、つくづくと聞いてやった。

「お前はなんで絶対にできもしない事を、やるやるっていつも騒ぐんだ?」

Wはその質問が耳に届かなかったフリをして、

「さてー、今日の冷蔵庫には何があるかな。楽しみー。」

と言いながら、キッチンへ行ってしまった。

今日の冷蔵庫の中に、入浴剤でも入れといてやればよかったと俺は思った。

ニューヨークのかわりに、入浴でもしとけって。
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プロフィール

月野

Author:月野
現在、病気療養中の四十代の女性。
最近少し忙しいので、あまり記事も書けないし、コメントの返事も遅くなるかもしれません。
ですが、過去の記事にコメントいただけるのは嬉しいので、歓迎しています。

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