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読者カード

今の図書館は、本の管理はどこもバーコードになってしまっている。

公立図書館でも、学校の図書館でも。

でもまだバーコードなんてなかった頃、本を借りるといちいち図書カードというものを書いていた。

今でも、小学校の図書館ではそうだろう。

自分が借りた本の題名を、自分の図書カードに書く。


でももっと昔は、自分の図書カードに書くだけではなかった。

本の後ろにカードを入れる所があって、そこに読んだ人が自分の名前を書いていくのだ。

確か読者カードといった。

自分の図書カードには、自分の読んだ本の題名が記される。

そして本に付いている読者カードには、読んだ人の名前が記されていく。


今は個人情報の保護とか言って、誰がその本を読んだか分かるようなそんなカードは考えられもしないだろう。

私の高校時代も、すでにその本の後ろの読者カードの制度は、なくなっていた。

だが古ーい古ーい本を手に取る機会があると、そこにはまだ読んだ人の氏名が記されたカードが入っていた。

黄色く変色したようなカードに、何人もの生徒の名前が記されている。

ずっとずっと昔の先輩の名前が、それぞれの字で、何人も何人も・・・。

それを見つけると、どこか心の一部がポッとあったかくなるようだった。

顔も知らない何人もの人が、私と同じ本を読んでいる。

同じ所に、感動したかもしれない。

同じ文章に、感化されたかもしれない。

そんな連帯感のようなものが、そのカードを見ると感じる事が出来た。

そのカードに名前を書く必要はもうなかったのだが、私は密かな喜びを持って、古い変色したそのカードの一番末尾に自分の名前を書いた。

そして、その本の連帯者に仲間入りしたような嬉しさを感じていた。


今はコンピュータで管理され、その本を読んだ人はだれか、誰がどんな本を読んでいるか、調べるのはもっと容易だろう。

だが容易が故に、その情報を外に出す事はなくなってしまった。

図書館の本はただ、読まれる本としてそこにある。

今までどんな人が読んだか、どの位の人が読んだかも分からないまま・・・。


読者カードが存在していたおおらかな時代・・・そんな頃にふと憧れを感じる事もある。
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プロフィール

月野

Author:月野
現在、病気療養中の四十代の女性。
最近少し忙しいので、あまり記事も書けないし、コメントの返事も遅くなるかもしれません。
ですが、過去の記事にコメントいただけるのは嬉しいので、歓迎しています。

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